住民税はなぜ2年目から引かれるのか|令和8年度の仕組みと計算例

入社して2年目の6月、給与明細に見慣れない「住民税」という項目が現れ、手取りが1万円以上減っていた——この経験は、新卒で就職した方の多くが通ります。

原因はシンプルで、住民税は「前年の所得」に対して翌年度に課される後払いの税金だからです。1年目に引かれないのは免除されているのではなく、単に対象となる前年の所得がないだけです。

本記事では、令和8年度(2026年度)の制度に基づいて、住民税の仕組みと計算式を公式データから整理します。

結論:なぜ2年目から引かれるのか

所得税住民税
課税対象当年の所得前年(1〜12月)の所得
徴収のタイミング当年の毎月(源泉徴収)翌年度の6月〜翌年5月
入社1年目引かれる原則として引かれない

つまり、入社1年目に住民税が引かれないのは「前年は学生などで所得がなかった」からです。そして2年目の6月から、1年目に得た所得に対する住民税が、12回に分けて天引きされます。

住民税が引かれるまでのタイムライン

4月に入社した場合の流れを、額面30万円の方を例に整理します。

時期起きること住民税
入社年(1年目)の4〜12月給与を受け取る(年収270万円=9か月分)0円
2年目の5月市区町村から勤務先に「特別徴収税額の決定通知書」が届く
2年目の6月〜翌年5月1年目の所得に対する住民税を12回に分けて天引き月8,400円
3年目の6月〜翌年5月2年目(12か月フル)の所得に対する住民税を天引き月12,550円

多くの方が見落とすのが「3年目にもう一段上がる」点です。 2年目に引かれる住民税は、1年目の「月途中からの9か月分」の所得がベースです。12か月フルで働いた2年目の所得がベースになる3年目の6月に、住民税はさらに増えます。

令和8年度の住民税の計算式

住民税(個人住民税)は、所得割均等割の2つで構成されます。

所得割

課税所得 = 合計所得金額 − 所得控除合計(基礎控除43万円を含む)

市民税額 = (課税所得 × 6% − 調整控除の市民税分 + 均等割3,000円)→ 100円未満切捨て
県民税額 = (課税所得 × 4% − 調整控除の県民税分 + 均等割1,000円)→ 100円未満切捨て

所得割の税率は合計で全国一律10%です(市民税6% + 県民税4%)。政令指定都市では市民税8%・道府県民税2%と内訳が異なりますが、合計額は変わりません。

ここで一つ、見落としやすい点があります。市民税と県民税は別の税目だということです。

まとめて「課税所得 × 10%」で計算してしまうと、実際より年額が100円ほど多くなります。正しくは市民税・県民税をそれぞれ計算し、均等割を足したうえでそれぞれ100円未満を切り捨てます。宮崎市が公開している令和8年度の公式計算例でも、この方式が採られています。

所得税の基礎控除は令和8年分で最大104万円まで引き上げられましたが、住民税の基礎控除は43万円のまま据え置かれています

均等割

所得の有無にかかわらず定額で課される部分です。

項目金額
市民税 均等割(標準税率)3,000 円
県民税 均等割(標準税率)1,000 円
森林環境税(国税)1,000 円
合計5,000 円

森林環境税は令和6年度(2024年度)から住民税に併せて徴収されている国税です。均等割は自治体の条例で上乗せされている場合があり、その分だけ実際の税額は多くなります。

調整控除

所得税と住民税で人的控除の額が異なることによる負担増を調整するための控除です。

課税所得が200万円以下の場合
  調整控除(市民税)= min(人的控除額の差の合計額, 課税所得) × 3%
  調整控除(県民税)= min(人的控除額の差の合計額, 課税所得) × 2%
  ※ それぞれ100円未満を切り捨て

課税所得が200万円超2,500万円以下の場合
  調整控除 = (人的控除額の差の合計額 − (課税所得 − 200万円)) × 5%
            ※ 2,500円未満となる場合は2,500円(市民税1,500円・県民税1,000円)

扶養家族がいない単身の場合、人的控除額の差は基礎控除分の5万円のみです。

ここも誤解しやすい点ですが、この5万円は「所得税の基礎控除104万円 − 住民税の基礎控除43万円」の差額ではありません。調整控除は税源移譲が行われる前に定められた差額を基準としているため、所得税の基礎控除が引き上げられても、この5万円は変わりません。

実例:額面30万円の手取りはどう変わるか

前提条件:額面30万円・東京・40歳未満・独身(扶養なし)・賞与なし・4月入社。健康保険は協会けんぽ東京支部の令和8年度料率、均等割は標準税率で計算しています。

2年目の住民税(年収270万円=9か月分がベース)

項目金額
年収(1年目の9か月分)2,700,000 円
給与所得控除−890,000 円
合計所得金額1,810,000 円
社会保険料控除−396,630 円
基礎控除(令和8年度)−430,000 円
課税所得(1,000円未満切捨て)983,000 円
市民税(6% − 調整控除1,500 + 均等割3,000)60,400 円
県民税(4% − 調整控除1,000 + 均等割1,000)39,300 円
森林環境税1,000 円
住民税 年額100,700 円
住民税 月額(7月〜翌年5月)8,300 円
住民税 月額(6月のみ・端数合算)9,400 円

3年目の住民税(年収360万円=12か月分がベース)

項目金額
年収(2年目の12か月分)3,600,000 円
給与所得控除−1,160,000 円
合計所得金額2,440,000 円
社会保険料控除−528,840 円
基礎控除(令和8年度)−430,000 円
課税所得(1,000円未満切捨て)1,481,000 円
市民税(6% − 調整控除1,500 + 均等割3,000)90,300 円
県民税(4% − 調整控除1,000 + 均等割1,000)59,200 円
森林環境税1,000 円
住民税 年額150,500 円
住民税 月額(7月〜翌年5月)12,500 円
住民税 月額(6月のみ・端数合算)13,000 円

手取りの推移

所得税と社会保険料を引いた手取りは 252,225円(手取り率84.1%)です。ここから住民税が引かれます。

時期住民税/月手取り手取り率
1年目0 円252,225 円84.1%
2年目の7月〜翌年5月8,300 円243,925 円81.3%
2年目の6月のみ9,400 円242,825 円80.9%
3年目の7月〜翌年5月12,500 円239,725 円79.9%
3年目の6月のみ13,000 円239,225 円79.7%

1年目から3年目で、年間に 150,500円 の差になります。

※ 6月の金額が他月より多いのは、年額を12で割ったときの端数が6月分にまとめて合算されるためです(地方税法第20条の4の2第6項)。

額面別の住民税早見表

「前年と当年の年収が同額」と仮定した場合の住民税(月額)です。条件は東京・40歳未満・独身(扶養なし)・賞与なしです。

額面(月給)年収住民税 年額住民税/月(7月〜翌5月)手取り(住民税込)
200,000円240万円84,100 円7,000 円162,740 円
250,000円300万円115,600 円9,600 円200,036 円
300,000円360万円150,500 円12,500 円239,725 円
350,000円420万円188,000 円15,600 円276,270 円
400,000円480万円227,100 円18,900 円313,956 円
500,000円600万円307,200 円25,600 円388,503 円

※ 6月のみ端数が合算され、上表より数百円多くなります。

ご自身の額面で計算したい方は、[手取り計算ツール](./tedori-keisan.html)をお使いください。「住民税も含めて計算する」にチェックを入れると、上記と同じ条件で計算できます。

いつから、いつまで引かれるのか

給与所得者の住民税は、勤務先が給与から天引きして納める特別徴収が原則です。

  • 期間:毎年6月から翌年5月までの12回
  • 通知:市区町村から勤務先に、5月中に「特別徴収税額の決定通知書」が送られます
  • 納入:勤務先は、徴収した税額を翌月の10日までに市区町村へ納入します

6月から翌年5月という区切りは、住民税の年度(6月〜翌年5月)が、課税の基準となる前年の所得(1〜12月)の後に始まるためです。

1月1日ルール:課税する市区町村は1月1日時点の住所地

住民税は、その年の1月1日時点で住民票がある市区町村に納めます。年の途中で引っ越しても、その年度の課税先は変わりません。

例えば2026年4月に大阪から東京へ引っ越した場合、2026年度(2026年6月〜2027年5月)の住民税は、2026年1月1日時点の住所地である大阪の市区町村に納めることになります。

退職・転職したときは「一括徴収」に注意

年度の途中で退職すると、まだ天引きされていない住民税が残ります。この扱いは退職月によって異なります。

退職の時期残りの住民税の扱い
1月〜5月申出の有無にかかわらず、給与や退職金から一括徴収されます
6月〜12月本人の申出があれば一括徴収。申出がない場合は普通徴収(自分で納付)になります

1月〜5月の退職では一括徴収が必須となるため、退職月の手取りが大きく減ります。転職先が決まっている場合は、特別徴収を継続する手続きを新しい勤務先の給与担当者に相談する方法もあります。

よくある勘違い

Q. 住民税は「年収の10%」ですか?

いいえ。所得割の税率は10%ですが、課税対象は年収そのものではなく、年収から給与所得控除・社会保険料控除・基礎控除を引いた「課税所得」です。額面30万円(年収360万円)の場合、住民税は年額150,500円で、年収に対する割合は約4.2%(4.18%)です。

Q. 1年目に住民税が引かれないのは、学生のうちは非課税だからですか?

所得が少なければ住民税は非課税になりますが、1年目に引かれない直接の理由は「前年の所得に対して課税される」という仕組みです。

ここで誤解されやすいのが、学生時代のアルバイト収入がある場合です。その所得に対する住民税は、入社してから課されるのではなく、入社1年目の6月からすでに課されています。「1年目は住民税がかからない」というのは、あくまで前年に所得がなかった場合の話です。

Q. 2年目に上がったら、その分すぐ住民税も上がりますか?

いいえ。住民税は後払いなので、昇給の影響が給与明細に表れるのは翌年度の6月です。例えば2年目に年収が大きく上がった場合、その増額分が反映されるのは3年目の6月からになります。

データ出典

  1. 個人住民税の所得割10%(市民税6%+県民税4%)/基礎控除43万円(令和8年度)/均等割の標準税率/総務省「令和8年度税制改正の大綱」(地方税) / https://www.soumu.go.jp/main_content/001048724.pdf
  2. 令和7年度税制改正における個人住民税の取扱い(給与所得控除の最低保障額65万円、基礎控除は改正なし)/総務省 / https://www.soumu.go.jp/main_content/000989803.pdf
  3. 特別徴収の仕組み(6月から翌年5月までの12回、5月末日までに決定通知書を送付)/いなべ市「個人住民税の給与所得からの特別徴収制度」 / https://www.city.inabe.mie.jp/m/u/kurashi/zeikin/shikenminzei/1000655.html
  4. 退職時の一括徴収(1〜5月の退職は申出の有無にかかわらず一括徴収)/総務省「住民税の特別徴収にご協力ください!」 / https://www.soumu.go.jp/main_content/000679115.pdf
  5. 調整控除の計算式(人的控除額の差:基礎控除分5万円)/宮崎市「計算例(令和8年度)」 / https://www.city.miyazaki.miyazaki.jp/life/tax/city_prefectural/449.html
  6. 森林環境税 年額1,000円/健康保険料率9.85%(東京・令和8年3月分〜)/介護保険料率1.62%/子ども・子育て支援金率0.23%(令和8年4月分〜・本人負担は折半で0.115%)/全国健康保険協会 協会けんぽ / https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g7/cat330/sb3150/r08/r8ryougakuhyou3gatukara/
  7. 1月1日時点の住所地の市区町村に納税する原則/総務省「住民税の特別徴収にご協力ください!」 / https://www.soumu.go.jp/main_content/000679115.pdf
  8. 厚生年金保険料率 18.3%(本人負担9.15%)/日本年金機構 / https://www.nenkin.go.jp/
  9. 雇用保険料率(一般の事業)13.5/1000、うち本人負担 5.0/1000(令和8年4月〜)/厚生労働省 / https://www.mhlw.go.jp/content/12600000/001672913.pdf
  10. 給与所得控除(令和7年分:最低保障65万円。令和8年度住民税の課税ベース)/国税庁「No.1410 給与所得控除」 / https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm

※ 取得日:2026年9月2日/計算条件:東京・40歳未満・独身(扶養なし)・賞与なし・均等割は標準税率
※ 扶養控除・配偶者控除・生命保険料控除・住宅ローン控除等は考慮していません。均等割は自治体により異なる場合があります
※ 住民税は市民税と県民税を別税目として計算し、それぞれ100円未満を切り捨てています
※ 正確な税額は、毎年6月に勤務先を通じて交付される「特別徴収税額の決定通知書」でご確認ください

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ご利用にあたって

本記事は、令和8年度(2026年度)の制度に基づく一般的な情報をまとめたものです。税額は扶養家族の有無、配偶者の収入、加入している健康保険、お住まいの自治体、各種控除などによって大きく変わるため、ここに記載した金額がそのままご自身の税額になるわけではありません。

  • 個別の税額や申告については、税理士などの専門家、またはお住まいの市区町村の窓口にご相談ください
  • 正確な税額は、毎年6月に勤務先を通じて交付される「特別徴収税額の決定通知書」でご確認ください
  • 制度は毎年見直されます。本記事は 2026年9月2日時点 の情報です

更新履歴

  • 2026年9月2日:初回公開(令和8年度の制度に対応)
  • 2026年9月2日:住民税の計算方法を修正(市民税・県民税を別税目としてそれぞれ100円未満を切り捨てる方式に変更、6月分への端数合算に対応)。免責事項を追加

ご利用にあたって

本記事は、公的機関の公開資料に基づく一般的な情報提供を目的としています。 税務・法務・金融に関する個別の助言ではありません。 正確な金額や制度の詳細は、公式の一次情報および専門家にご確認ください。